junichimoriwaki2006-06-27

(6/26 前編のつづき http://d.hatena.ne.jp/junichimoriwaki/20060626
駅前のホテルまで、ついに友部さんを迎えに行った。
あいさつをして握手をして、ギターケースを車に積みこんだ。
友部さんやイベンターのおじさんにとっては日常の世界、僕にとってはまったくの別世界。
本番までまだ時間があるので、割り子そばをいっしょに食べに行くことになった。車の中でカセットテープを聞きながら、ローリング・ストーンズはっぴいえんどカート・コバーンの話をした。
東京のコンサート会場は、楽屋と客席とステージの境界線がはっきり区切られているけれど、今夜の会場は、街外れの喫茶店。楽屋は車の後部座席。ステージ衣装に着替えた友部さんは、ふらっと夜の散歩に出かけるように、車のドアを開けて出て行った。
コンサートが終わって、打ち上げに参加させてもらった僕は、酔いの勢いも手伝って、明日の朝、車で松江を案内させてくださいと、しゃしゃり出てしまった。友部さんは快く了解してくれた。
快晴の春の朝。車の窓から朝の宍道湖を眺めながら、「曇り空と北風の吹く街」という松江のイメージが変わったと、友部さんが呟いた。
突然道路沿いに現れた、黄色い菜の花が咲き誇る小川。思わず車を止めて外へ出た。奥さんのユミさんが、カメラのシャッターをきった。

東京に戻り、しばらく経ったある日、僕は思い切って友部さんのお宅へ伺うことにした。当時、中目黒に引っ越したばかりの友部さんのアパートで、ボブ・ディラン海賊版(グレート・ホワイト・ワンダー)やマシュー・スウィートを聞きながら、歌の話をたくさんした。
図々しく居座る、まるでジョン・レノンの映画「イマジン」に出てくるヒッピーみたいな僕のぶんまで、ユミさんはヒレカツをつくって御馳走してくれた。

あれから10年以上過ぎたけれど、あの日受け取った精神のバトンは、今なお、僕の手に握られたままなんだ。
BGM)すばらしいさよなら/友部正人 & THE BOOM


友部正人 公式HP http://www5a.biglobe.ne.jp/~hanao/tm-index.htm